
木の下に腰かけて本を読む僕にたくさんの生き物たちが近づいてくる。
彼らは僕を敵とは思っていないのだろう。
僕が寄りかかっている木と同じ。
登るべき何かくらいにしか考えていないのだろう。
彼らは何も言わずに僕の体をよじ登り動き回る。
彼らに僕は君たちと同じ生き物だと言っても理解しますまい。
地肌の部分に彼らの脚の感触を感じる。
僕はくすぐったくなる。
しかし振り払いたくなる気持ちをこらえる。
彼らの感触をじっくりと噛みしめる。
僕と同じように彼らもその脚で僕の肌の感触を確かめている。
僕らの間で争いなど起こりえようか。
僕はおもむろに目を瞑る。
風の声が聞こえ、遠くからは子どもたちの超えや農機が動く機械音が聞こえる。
鳥が鳴いている。
大きく息を吸い込む。
僕の周囲の生命が僕の中に入り込んでくる。
大きく息を吐き出す。
周囲に僕の生命がとけ込んでいく。
僕は生きている。
彼らと共に生きている。
僕は木の下にいる。
生命を感じながら。